こちらからの続きです。
このディスカッションは以下のような前提で始まっています。「問診・診察で片頭痛と診断され、さらにCTやMRI等の一般的画像検査で二次性頭痛(脳腫瘍・脳動脈の異常など)が否定された症例にトリプタン剤を処方したものの効果がなかった場合にどのようなアプローチを行うか」
(1) トリプタン剤の服用の仕方を再指導する:頭痛がはじまったらなるべく早期に服用する、しかし、前兆が現れただけで服用するのは早すぎる
(2) 最初に処方したトリプタン剤とは異なるトリプタン剤を試してみる:トリプタン剤と患者さんの間には「相性」があり、1種類が効果がなくても他剤で効果が出る場合がある
(3) 制吐剤(ナウゼリン等)の併用:片頭痛は嘔気をともなうことが多く、仮にトリプタンの口腔内崩壊錠であっても消化管からの吸収がうまくいかないことがあり、これを予防することは有意義である
(4) 片頭痛予防薬を普段から服用してもらう:カルシウム拮抗剤(ミグシス・テラナス)、βブロッカー(インデラル)、三環系抗うつ剤(トリプタノール等)、SSRI(パキシル等)、漢方製剤(五苓散等)などが有用といわれる
(5) 緊張型頭痛の合併例(旧来の「混合型頭痛」)を考慮した発作時薬・予防薬を試みる:解熱鎮痛剤の併用(発作時・アセトアミノフェン、ロキソニン等)や、精神安定剤(デパス等)、筋弛緩剤(テルネリン・ミオナール等)、漢方製剤(葛根湯等)などを予防的に服用する
(6) 生活指導をやりなおす:規則正しい生活、ストレスからの離脱、十分な睡眠・運動を勧める
(7) あらためて二次性頭痛の検討を行う:静脈系も含めた脳画像の検討(通常のCT/MRIでは検討しないような検査を含める)、頚椎病変の検討、血管炎などに対する膠原病類似疾患の検討など
(8) 精神神経科的疾患のスクリーニング
(9) 他に服用している薬剤がないかどうかの再聴取(慢性連日性頭痛の可能性の検討)
(10) 血圧が高めの症例にはARB(アンジオテンシン受容体阻害薬)を加える
これだけですべての症例が解決するわけではありませんが、出席したドクターの経験などで出てきたひとつの方向性です。中にはガイドライン通りのものもあり、また「ほう」というべきものもありますが、トリプタン剤という有効な片頭痛治療の武器を手にいれつつ全ての患者さんを救済できるわけではない現状を少なからぬドクターが憂い、工夫しているのは事実です。
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