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2011.09.18

第28回日本医学会総会2011東京 特別企画プログラム

 4月に開催予定だった医学会総会が3.11の大震災で縮小・延期され、限られた演題だけを並べてお台場の東京ビッグサイトで講演会となりました。災害医療支援に関わる発表は三品先生のブログでご覧下さい。
 個人情報のしばりで融通の利かないはずのレセプトデータがお役に立った、という発表が福岡大学の谷原先生から「被災地医療支援及び再建における診療報酬明細書(レセプト)情報の有効性」と題して発表されました。東日本大震災の後、被災前の診療情報消失が問題となりました。こうした情報を震災後現存する診療情報から復元することについての報告です。以下箇条書きで並べます。

<発生した状況>
1)診療所のカルテ・レセコンを含む一切の診療情報の喪失
2)患者さん本人の健康保険証紛失と自分の投薬にかかわる記憶のあいまいさ
3)保険請求されたレセプトは審査支払基金に残っている

.....つまり、大けがはしないで済んだものの、着の身着のまま逃げて避難所に入ったため普段服用している高血圧や脳梗塞再発予防の薬がなく、かかっていた診療所や病院も被災してしまったためどんな薬を飲んでいたかがわからない状況になった患者さんたちが大量に発生した、という事実です。ここでレセプトデータが迅速に開示され、それを避難所の緊急診療所で参照できれば良かったのですがそうは簡単に行かなかった、というわけです。本来は個人登録番号でも用意されていて、そこから検索すれば病歴や投薬歴がわかる、というのが筋道であるべきなのですが。

<時間的経緯>
3/19 岩手県医師会から国保連合会に対してレセプトデータ提供依頼あり
3/25 第三者に対するレセプト情報開示の許可が下りた
4/11 死亡者身元確認のため歯科レセプト情報開示がなされた
<各県別の照会状況>
福島県 2863件のレセプト照会
    主として頭書き情報、薬歴については96件(3%)にとどまった
宮城県 資格関係の照会がほとんど(県内<県外)
岩手県 投薬内容の照会が多かった
    被災した医療機関を再開・復興させるためにデータ提供依頼あり
    頭書き情報・傷病名・投薬内容などを開示(データもしくは紙媒体)
<照会の妥当性の検証>
 ほとんどが医療機関からの電話による依頼であったが、支払基金よりコールバックして身元を確認し、情報そのものは電話で伝えることはせずファクスで送信することにより伝達した。
 
 これまで請求-支払のための審査の対象でしかなかったレセプトデータが未曾有の災害に対しわずかでも役に立ったのは素晴らしいことだと思います。こうしたデータは本来患者さんのためのものです。ですから、こうした大災害の時だけでなくきちんとセキュリティをかけた状況で日常診療のために用いられる日が来るべきだと思います。こうした経過はあまり一般ニュースにも流れません。是非、われわれ医療者だけでとどめず世間に広められるべきではないでしょうか。

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コメント

レセプト情報の取得、気仙沼の本部で要請を依頼した際には、「個人情報保護の観点から無理だろう」と取り合ってもらえず、ほぞを噛む思いをしました。私の行った時期は4月上旬であり、すでに情報開示が決定した後だったことを考えると悔しい限りです。開示が行われていることが伝わっていなかったことこそ、情報共有が上手く行かなかったことを示していると思います。

色々なところで書いていますが、タブレット+VPN+WLANルーターと電源(ガソリン発電機など)があれば、現地で情報の検索も簡単にできるはず。回線は衛星回線でも良いし、各携帯キャリアの中継車の配置でも良いし。

投稿: ありい | 2011.10.08 午前 07時39分

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