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2012.02.29

江戸川区医師会綜合臨床研究会

1202yamazaki_2 標記研究会は小生が当番座長でした。年に1回神経疾患を題材にさせていただくことが出来ます。本年度は日本医科大学内科(神経・腎臓・リウマチ膠原病部門)准教授:山崎峰雄医局長をお招きして認知症につきご講演いただきました。講演は新規抗認知症薬「イクセロンパッチ」のノバルティスファーマ(株)です。
 初っぱなに「日本ほど抗コリンエステラーゼ剤のどれがよいかと真剣に議論される国はないのではないか」とバッサリ。これまで認知症治療に大きな成果を上げたドネペジル(アリセプト)があり、昨年登場したガランタミン(レミニール)とリバスチグミン(イクセロンパッチとリバスタッチ)が加わり、薬効の違うメマンチン(メマリー)は別として、「長期処方が出来るようになったらどれを使えばいいんだ」という疑問を持つドクターばかりという状況になっているのですが、それぞれの薬剤には微妙に違うこせいがあり、かつ患者さん一人一人への相性があることも事実。それを理解した上での一言と感じました。切替の時もいきなり大容量にすることなく(少しは漸増してゆく感覚は縮めても)中等量を試しながら行くべき、という方法論も納得できるものでした。
 2月6日の会ですでに東大岩田先生も話されたAβワクチンなどの先進薬剤の話も出ましたが、「認知症は症状が始まってからでは根本治療は難しく、外国ですでに始まっている「発症予備軍」を対象にした臨床試験の話題提供もご紹介され、本当に面白い(ためになる)講演でした。

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2012.02.26

頭痛フォーラム2012

2012 エーザイ(株)が主催、日本頭痛学会後援の表記講演会に参加してきました。初っぱなに頭痛学会坂井理事長から「Headache Master School」の話がありました。英語でのスモールグループ研修も含む講演会を催し、100名ほどの「頭痛マスター」を養成する、というお話しです。さて、頭痛に関するこうしたメーカー主催の会は複数ありどれもプラクティカルな内容ですが今回も同様でなかなかためになりました。竹島多賀夫先生の「新規抗うつ薬のデュロキセチンは結構いい」という壇上でのつぶやきも聞き逃しませんでした(副作用は大丈夫でしょうか?)。
 さて、今回頭痛外来を謳っている専門医5人が壇上に上がり、「私の頭痛外来」というテーマでパネルディスカッションが行われました。そこで皆さんの「頭痛診療のモットー3題」が披露されましたのでご紹介させていただきます(本来はちゃんとそれぞれ詳しいコメントがあるのですがそこまでは再録できないので割愛させていただきます)。ながしま脳神経・頭痛クリニック長島正先生:わかりやすい診療、EBMに基づいた診療、シンプルな処方。秋葉原駅クリニック大和田潔先生:患者さんの訴えをよく聴く、患者さんを励まし続ける、禅の心でジッと忍ぶ。東京女子医大清水俊彦先生:余計なことを考えない、診療は日付が変わるまでに終わればよい(自分の時間は二の次)、頭痛は診れば診るほど見えてくる。広南病院松森保彦先生:「想定外」を意識して二次性頭痛を見逃さない、自分の知識の絶え間ないupdate、上質な問診のための忍耐力。西宮市立中央病院前田倫先生:痛みの本質を見過ごさない、頭痛は慢性疼痛の一つとして位置づける、3歩先を見つめ、2歩先を語り、1歩先を照らす。
 本日の会には慢性頭痛友の会の秋山扶佐子代表も会員アンケートについてお話しされました。地域による頭痛医療格差をなくしたい、とのお話しでしたが会員の方々は頭痛に関してかなり勉強しておられるようで、「こういう治療(投薬)を受けたい」とドクターにお願いしていいのでしょうか、と先ほどの専門医5人に質問されました。もちろん結構です、との回答を受け取られました。当院でも大丈夫ですし、大歓迎です。

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2012.02.15

第5回江戸川メタボリックシンドローム研究会

1202nagao 両国第一ホテルにて標記研究会がアステラス製薬との共催で開催されました。第一席は江戸川病院からのCAS(ステントによる内頚動脈狭窄治療)の報告ととディスカッションで、第2席のspecial lectureの東京女子医大長尾毅彦先生の講演を座長させていただきました。荏原病院にて脳卒中治療のエキスパートとして第一人者となり2010年に東京女子医大の内山真一郎先生にヘッドハントされてご活躍中です。「一過性脳虚血発作(TIA)の理想的な診療態勢とは?:予防から治療、啓発まで」とのタイトルでTIAについての最新所見を中心に170枚もの画面でレクチャーしていただきました。
 「TIA is not mini-Stroke」つまり、脳梗塞様の症状が消えて良かったのではなく、もしTIAが起こったとすればそれはより重篤な本番脳梗塞を控えている、という危険信号であることを強調されました。その診療態勢には病診連携がなにより重要であること、さらに心房細動のあるなし、高血圧・高脂血症・糖尿病といったメタボリックシンドロームの存在と早期からの治療の重要性が説かれました。TIAは、症状があるうちは脳梗塞なわけで、症状消退してもなお同様の取扱い方をすべきであり、心電図・血液検査・MRI検査のほか頸動脈エコーなどをワンセットに迅速な診断プロセスに乗せなければなりません。その上で、適切な再発予防策を決定するわけです。この中には早期からのスタチン剤による抗コレステロール対策や降圧剤投与・抗血栓療法(抗血小板剤・抗凝固剤)も含まれます。
 さらに、急性期がすぎたあとにはかかりつけ医でしっかりした治療継続がなされなければならないわけで、地域ぐるみの病診連携が重要である、とのことでした。なお、「市民公開講座をやっても聴きに来る人はもうとっくに知っている」というくだりはちょっと(わかってはいても)予防医学の限界を教えられたような気がしました。

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2012.02.08

城東地区メマリー学術講演会

1202memary 標記研究会が第一三共製薬の主催でイースト21江東にて開催されました。「メマリー」はNMDA拮抗作用を有する新規抗認知症薬で、院長はその使用経験を発表いたしました。自分でもかなり有用な薬剤であると考えています。メインスピーカーは香川大学精神神経科教授:中村祐先生でした。メマリーは古くからパーキンソン病の治療に使われていた「シンメトレル」をもとに造られた薬剤ですが、中村先生のカロリンスカ大学(スウェーデン)の恩師が認知症に使ってみたら効果があり実用化に至った、という経過をお聞かせいただきました。他の抗認知症薬であるドネペジル(アリセプト)・リバスチグミン(リバスタッチ、イクセロン)・ガランタミン(レミニール)などのコリンエステラーゼ阻害剤は頭頂葉に効いて脳の活動性を上げるのに対し、メマンチン(メマリー)は前頭葉の機能を上げるのだそうです。従って、ピック病などのFTD(前頭葉型認知症)にも効果があるのではないか、とのことでした。メマリーは中等症から高度のアルツハイマー型認知症に適応がありますが、使い方のアルゴリズムとしては(1)コリンエステラーゼ阻害剤が使えないもしくは効果がなかった症例に、(2)イライラ・焦燥感が強い症例への第一選択として、(3)自発性低下が強くコリンエステラーゼ阻害剤を使用開始したもののすっきり行かない症例への追加投与として、ということを挙げておられました。このうち(2)のケースではしばらく使って元気が出ないようならコリンエステラーゼ阻害剤を追加、がアリとのことです。いままで新規抗認知症薬の講演会では一昨日の岩田先生、本日の中村先生のようなクリアカットなご説明がなく、自分の判断が間違っていないかどうかを確かめることが出来ませんでしたが、ようやくスッキリ纏めがつき、大変安心いたしました。
 記念写真は左から慈恵医大鈴木先生(座長)、中村先生、私、きうち内科クリニック木内先生(座長)、江戸川病院加藤院長(Closing Remarks)、元江戸川区医師会長小暮先生です。なお、懇親会ではカロリンスカへご留学された中村先生とスウェーデンの話で盛り上がってしまいました。

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2012.02.07

心房細動の患者さんに抗凝固療法を

Nbi 心房細動は慢性的に続いているものであれ発作性に起こるだけのものであれ脳塞栓症(塞栓による脳梗塞)を発症させる危険性を有する不整脈です。国内の著名人の例を拾えば、故小渕首相、長嶋茂雄監督、オシム監督などが挙げられます。オシム監督は一昨年のAC(公共広告機構)のTV CM(3.11の後かなり流された)にも登場して脳卒中の危険性をアピールしていましたが、今回脳卒中協会と日本ベーリンガーのコラボレーションによる心房細動から脳塞栓症発症を予防するための「抗凝固療法」を薦める広告のイメージキャラクターを務めることになりました。表はオシムさんご本人、裏は奥さんの写真とメッセージが載ったタブロイド判の冊子が医療機関に配られ始めています。また、患者さん向けのHPも開設されております。
 心房細動は無症状の人もあり、本来は抗凝固療法(薬剤名で言えば「ワーファリン」か「プラザキサ」)を受けていなければならないのですが服薬中の検査管理が面倒という理由でアスピリン(バイアスピリン、バファリンなど)の投与でお茶を濁されている患者さんがまだまだ多いことが知られています。この冊子が心房細動をお持ちの方々(さらにその主治医)に広く行き渡り、脳塞栓症で倒れる患者さんが一人でも減らすことが出来るよう祈らずにはおられません。

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2012.02.06

江戸川認知症セミナー

1202edogawa 小野薬品の主催で、標記研究会が江戸川病院講堂にて開催されました。メインスピーカーは東京大学岩田淳准教授で「アルツハイマー病の臨床試験の今後、未来の話」でした。アルツハイマー病であっても認知症ではない病態もあり、そうした状態を捉え、その時点で介入してゆく治療技術を研究しておられます。前座として院長は「当院におけるリバスチグミンの使用経験」を講演させていただきました。
 なお、岩田先生からはさるコミュニティで早速「友達申請」をいただいてしまいました。恐縮しきりです。なお、先生はドネペジルから他の抗認知症薬(ガランタミン、リバスチグミン)への変更の際は小薬容量からの漸増ではなく最終容量をいきなりお出しになっているとのことでした(薬剤部からは文句をつけられる、とも)。こうした話題は今春の学会シーズンでいろいろなエキスパートから聞くことが出来るようになるはずです。3月から7月にかけて昨年登場した新規抗認知症薬が長期処方が可能になり、さらに多くの患者さんのお役に立つことになるはずで、しっかりしたガイドラインというか「どんなケースにどの薬剤を」という目安が明らかになることが望まれます。

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