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2012.04.21

プラザキサ学術講演会:1年間の使用経験を踏まえて

 丸ビルホール&コンファレンススクエアにおいて標記研究会が開催されました。演者は金沢大学付属病院朝倉英策准教授と東邦大学循環器内科杉薫教授のお二人でした。僕は朝倉先生の座長を務めさせていただきました。
 何回か書いているとおり、ダビガトラン(商品名プラザキサ)は、心房細動の患者さんの脳塞栓症予防効果を有する抗凝固剤で、これまでのワーファリンに代わる新世代抗凝固剤として昨年登場した薬剤です。腎障害などの問題があり、これまで投与方法として確立している「110mgを1日2回(計220mg)」もしくは「75mg2カプセルを1日2回(計300mg)」しか保健適応がありませんが、われわれ医療者の間ではもう一段少量の投与「75mgを1日2回(計150mg)」を実現できないか(有効性の確認と厚生労働省の認可)がいつも論議されています。
 杉先生のご意見は「150mg/日投与によって脳梗塞のリスク回避がどれだけ可能かというデータが出ていない現時点ではなんとも言えない」というものでしたが、朝倉先生はそうしたエビデンスについては重要であるものの、血栓止血方面の専門としてのご意見を「私見」として表明しておられました。ワーファリン使用のモニタリングにはPT-INRが用いられますが、最近出たいくつかの研究会では「ダビガトランにはAPTT、さもなくばそれ自体の薬剤血中濃度(普通には測定できません)を」というのが定説でした。朝倉先生はモニタ要素を「副作用」と「効果判定」に分け、副作用についてはAPTTとPT-INRの併用、効果については可溶性フィブリン(soluble fibrin,SF)、プロトロンビンフラグメント(F1+2)、TAT、D-dimerのいずれかを用いれば年余の経過を見るよりもその患者さんの評価ができるはず、とお話になりました。そうであれば、150mg/日投与でも年何回かの血液検査で追いかければ副作用と効果判定が可能であり、徒手空拳でエビデンスデータのみで投与しているよりは安心して患者さんに対応できるのではないかと思われました。
 このダビガトランを始め、今週発売が始まったリバロキサバン(商品名イグザレルト)はともに血中半減期が短く(それが利点でもあり欠点でもあるのですが)モニタリングが困難となっているのですが、できれば薬剤を複数放出時間の除放マイクロカプセル化した製剤にしてしまえばいいわけで、そうした方向での開発も検討して欲しいところです。これは杉先生にも「そうなったらいいですね」とご同意いただけました。なお、朝倉先生は教室ブログ(!)を担当しておられ、エントリー数も多くいろいろ勉強になります。なお、先生はMacユーザーでした(いいね!)。

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コメント

この度はお世話になりありがとうございました。
また先生のブログで記事にとりあげていただく恐縮いたします。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

投稿: 金沢大学血液内科 | 2012.04.22 午前 09時12分

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