「脳過敏症候群」に関する頭痛学会コメントについて
女子医大頭痛外来の清水俊彦先生が提唱している「脳過敏症候群」についての頭痛学会理事長坂井文彦先生のコメントが頭痛学会ホームページで8月14日付けで公開されました。
「脳過敏症候群」に関しては、清水先生が国内・国際学会で積極的な研究発表を行い、実際抗てんかん薬であったバルプロ酸(商品名デパケン、セレニカ)やトピラマート(商品名トピナ)の片頭痛に対する治療効果から「ありうる説だ」という理解が広まりつつありました。昨年はバルプロ酸の片頭痛に対する厚生労働省の適応認可がおり、表立って片頭痛の患者さんへの投薬が出来るようになっておりましたが、そうした折、NHK「ためしてガッテン」で片頭痛を卒業したはずの人たちに起こる耳嗚・めまいへの治療効果に就きセンセーショナルな紹介がなされました。自分もちゃんとビデオに撮ってあるのですがデパケンのパッケージが画面に映り、一気に世間への認知度が広まりました。実は、それ以前もデパケンRを片頭痛の患者さんへ「頭痛発作を予防する薬」として処方していたのですが、心ない調剤薬局によっては「あなた、てんかん持ちだったの?」などという薬の渡し方をされたこともあり、患者さんが服用することを躊躇する場面も多く、治療効果も上がっておりませんでした。この番組以降、患者さんの服用率が上がり、かつ治療成績も向上するという、患者さんにとっても投薬する自分にとってもハッピーという状況になりました。
ただし、こうした事態はあまり(頭痛専門医にとっても)歓迎されたものではない面もあったようで、坂井先生の「学会ホームページ上のコメント」がなされたものと受け止めました。こうした「予防薬治療」はもとより成功率はさほど高くなく、自分も頭痛学会で「予防薬の決め手がない(=数多くの選択肢から選ばざるを得ない)」ことを発表し、何人もの先生のご賛同を得ています。その中でより正解率の高いバルプロ酸の効果を背景にした「脳過敏症候群」説が闇に葬られるような事がないように祈るばかりです。
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付記(2012.09.05)
後日譚があります。このページをご覧になった方はどうぞ一緒にご閲覧ください。
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