« ITで変わる医療と教育のミライ:Team医療3.0 | トップページ | 「脳過敏症候群」に関する頭痛学会コメントについて »

2012.08.11

銷夏随想集「リットマンの聴診器について語ろう」

1205 東京都医師会雑誌の8月号に会員の随想集「銷夏随想集」が掲載されています。随筆のみならず素晴らしい写真や書もありましたが、その中に「リットマンの聴診器について語ろう」の一文を採択していただきました。折角ですので(自分の書いたものですし)転載させていただきます。
「リットマンの聴診器について語ろう」
 リットマンとの付き合いは古く、研修医になった頃持っていたのは医学生時代から使っていたもので、現在ある型でいくと「Classic」と似たようなスタイルでチェストピースの膜部分は金属リングでねじ留めされていた(現在の型はプラスチックリングで嵌めるようになっている)。入局早々、同僚の「循環器内科の連中はチューブを短く切って聞こえを良くしている」という甘言に乗って約5-6cmも切り詰めてしまった。その分患者さんの胸に顔を近づけて聴診をせねばならず、結構使いにくくなってしまった。入局したのは循環器内科でなく神経内科であったのに(苦笑)。
 しばらく経って、「Cardiology」というタイプを購入した。少し深めのベル型と膜型を切り替えて使うもので、永年愛用した。その次に買ったのは「Master Classic」である。ベルがなく、膜型のみで押しつける圧力を変えることによって膜型本来の聴こえ方とベル型同様の聴こえ方を切り替えて使えるという触れ込みになっていた。といっても僕の耳では聞き分けられるものではなかったが。これは金属部分以外の部品(膜・チューブ・イヤチップ)などを何度も更新しながら現在でも週1回午前中大学病院の外来ブースで使用している。
 開業してから小児科も兼業することになり、新たに「Cardiology II」を購入した。「Cardiology」のベル型の部分に小児用の膜がついたもので、先の「Master Classic」のように押さえ方でベル/膜の音質が切り替えられると言う触れ込みだったがこれはあくまで成人用・小児用としてしか使い分けていない。このタイプからチューブ内腔が二つに分かれ、聴診音が「ステレオで聴こえる」ようになったと言われるがやはり自分にはわからない。最近担当するようになった特別養護老人ホームで聴診器を用意してくれるというので「 Cardiology III」を購入してもらった。この「III」は以前の「II」と比較するとチェストピースを回転させる部分の精度が低くなっているように思われる。「II」だと所定の位置にロックされる時ヌルッと得も言われぬしっとりさで固定されるのに「III」では「カチン」なのである。細かいところがコストダウンされているのかも知れない。
 最近電子聴診器の話題を目にした。調べると以前のようにチューブの途中にアンプ・電池収納部分が挟み込まれる不格好なものでなくなり、一体型チェストピースに電池も納められる構造で、BluetoothによりPCへ聴診データを飛ばせるという。そこで一つ試しに、と「Model 3200」を早速購入してみた。聴き心地は良好。ノイズキャンセルが効くため衣服の上からでも衣擦れがせず、周囲の騒がしさに強くなった。しかし、聴診しながら患者さんと話すことは不可能となった。また、血圧測定に使う際にはちょっと支えるのが面倒である。まあ今後、聴診器で血圧を測る医者など減ってくるだろうからそういうことまで考慮されていないのだろう。BluetoothによるPC接続はちょっとがっかり。心音図をとることが目的のデータが専用ソフトに送り込まれるものだった。おまけにPCで表示するためにはいちいち氏名を入力して記録モードを立ち上げておかねばならない。不便極まりなく残念。
 僕の「理想の聴診器」はチェストピース部分のみを患者さんの体にあてるとPCのスピーカーから聴診音がきこえ、同時に心音図が表示されるものである。これならイヤピースを耳に入れる必要がなくなる。必要な時に時間を遡って記録が出来ればなおよい。ちょっとした工夫で何とかなりそうなのだが、この文章、メーカーさんの目に留まってくれるだろうか。一途なリットマンユーザーの声を聞き届けてはくれないかなぁ。

|

« ITで変わる医療と教育のミライ:Team医療3.0 | トップページ | 「脳過敏症候群」に関する頭痛学会コメントについて »

コメント

お世話になってます。レコーディング等の音の仕事をしている者として、聴診器のお話とても面白く拝読しました。使う器具への繊細なこだわりも伺えて、共感しながら楽しかったです。

投稿: | 2012.08.13 午後 11時08分

コメントありがとうございます。僕は聴診器を(未だに)使用している古いタイプの医者なので(最近は使わないお医者さんが増えているらしい)、こだわりが人並みでないのです。だいたい、医者一人が聴診器の音を聞いているのは不合理です。どうせならちゃんとアンプとスピーカーで患者さんも一緒に聴ければいいのに、と考えてマイクと壊れた(壊した)聴診器のヘッドでPC出力を試みた事がありますがうまくいきませんでした。いまでも、聴診器のイヤチップを耳にいれずにPCにケーブルでつないだ聴音ユニットを患者さんに当てて診療したいと思っています。

投稿: 管理人 | 2012.08.17 午後 07時15分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 銷夏随想集「リットマンの聴診器について語ろう」:

« ITで変わる医療と教育のミライ:Team医療3.0 | トップページ | 「脳過敏症候群」に関する頭痛学会コメントについて »