「脳過敏症候群」に関する頭痛学会コメント後日譚
前回こちらで記載した「『脳過敏症候群』に関する頭痛学会コメント」が、日本頭痛学会のHPから削除されていました。第一段階では清水俊彦先生の実名が消されたものになり、第二段階として削除になったようです。同時に、リンクが張られていた「News and topics」のページからもタイトルが消え、しかし「何でそうなったか」については触れられていないままです。本件についてはそれなりに公のHPで個人名まで出しての攻撃であっただけに釈然としないものがあり、11月の学会総会でどのような動きになるのか注目したいところです。
ブログの外では、ある親しい脳神経外科の先生からは「(患者さんに脳過敏症候群について聞かれても)現段階ではそのような病気があるとは思えない、僕は知らない、と繰り返し話します。大学の看板しょって外来している以上好い加減なことはできません」というご意見もいただきました。これも正論であり、他の疾患で同様なことがあれば僕も同様の反応をします。
目々澤醫院では脳過敏症候群ではないかとおとずれた患者さんに対して、「(デパケンの)この使い方は健康保険で認められてはいない、でも効いた人たちが居るという報告は聞いたし、読んでいる。だから、検査そのものが重要ではなくて耳嗚や治りがたいめまいの患者さんへのひとつの治療選択肢だ」とご説明しています。もちろん、過去もしくは現在に片頭痛の既往があれば片頭痛の病名で投薬しています。実際に4割ぐらいは効果があり(中止すると悪化する)ます。これらの症状の方々はどんなちょっとしたことであっても希望の光が見つかればそれをたぐって来院されるわけで、一概に「ダメだよ」とは言えません。ちゃんとリスクを説明し、どの程度の効果が出るかはやってみないとわからないことも説明した上で理解していただければ投薬するし、それが効果があればお役に立てたことになります。
「ためしてガッテン」のように天下のNHKが放送する番組ではあまり極端な作り方をして欲しくないと思います。昨日も海外でダイビングインストラクターをしている方から「過換気症候群で紙袋呼吸はダメになったんですか?」というご質問をいただきました。よく見れば必ずしもそういうわけでもないのですが、タイトルはどうしても「あおる」感じになってしまい、タイトルは何らかの形で他のメディアにも出て残ってしまうわけです。これも番組の作り方がマズイからで、こうした面にきちんとした監修が入るようにできないものかと痛切に感じます。
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2012.11.17追記
昨日の頭痛学会総会ではこの件に関してフロアから会長・理事長に質問があり、「今後脳過敏症候群に対する検討を学会でも討論の俎上に載せる、今回の学会ではまだそうした準備が出来ず次回・次々回へその意向を引きついてもらう」との喜多村会長からの回答がありました。
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コメント
ある患者団体の抗議によって、日本頭痛学会が削除したようです。しかし、先生の言われるように、削除の理由を明確にすべきではなかったのでしょうか?
先生が言われるような抗てんかん薬を求めて患者さんが来院されるのであれば、先生のような対応を私もします。
しかし、私の医院には、頑固な耳鳴、頭鳴を訴えて、高齢者70歳以上の方々が「トリプタン製剤」の処方を求めて来院される方が殆どでした。こういった場合、説明がややこしくなって来ます。また、過去に片頭痛でなく緊張型頭痛をこじらせた方々も多数来院され、こちらにも辟易させられました。いずれにしても、先生のような患者さんであれば問題ないと思いますが。
私は、日本頭痛学会のこのような「極めて、曖昧な・不可解な」記事の削除には納得しかねます。
投稿: たく | 2012.09.04 午後 01時26分
「たく」さん、コメントありがとうございます。本当にあの時の「ためしてガッテン」は困ったつなぎ方で、最初に清水先生登場前にデパケンのパッケージが紹介され、清水先生のコメント、そして平田先生が出て片頭痛一般とトリプタンの話とつながっていました。ですから、「耳嗚・めまい」→「トリプタン」となってしまうわけです。
ちゃんと番組を見て、録画して、キャプチャを自分のPC画面に表示できるようにしておいてなんとか対応できるといった状態で、たしかに患者さんたちに混乱を与えたことは事実だと思います。
頭痛学会はこうした混乱を沈静化させる仕事をすべきであって、混乱に拍車をかけたりするべきではなく、しっかりとした建設的な対応をとって欲しいと思っています。このため、あえてこの「恥ずかしい」スクリーンショットを出しているのです。
投稿: 管理人 | 2012.09.04 午後 11時43分
先生は、どのようにお考えかお聞き致します。私は、先生とこの件に関しては別の観点をしております。それは、清水先生は、トリプタン製剤で治療していないと「脳の過敏性が増大」して、後々、「脳過敏症候群」になると申されますが、私はこの「脳過敏」はストレートネックが関与していると考え、このストレートネックが改善されないために「脳過敏症候群」へ移行していくものと考えております。先生の申されますように、抗てんかん薬で4割は改善されるが、中止すると再度増悪してくるということと一致するように思います。
この点に関しては、私のブログ「頭医者のつぶやき」をご覧頂きたく存じます。http://headache.blog.ocn.ne.jp/
拙い考えですが、コメント戴きたく御願い申し上げます。
投稿: 田草川 良彦 | 2012.09.05 午後 05時48分
田草川先生のブログは拝見したことがあります。ブログは、一般の患者さんたちも見ることが出来るものです。従って、ご自分が主張していることを何でも書けばよいと言うものでもありません。確かに、片頭痛の患者さんたちの頸椎を見るとストレートネックの方が多いのも事実ですがそれをもって「ストレートネックが原因」ということは難しいのではないでしょうか。
こうした原因論のディスカッションはブログで行うものではありません。きちんと学会レベルでお願いします。
投稿: 管理人 | 2012.09.06 午前 01時13分
私は、これまで学会でなしに、この地域の勉強会のような所で「頭痛とストレートネック」に関する成績を発表しようとしましたが、この会は、頭痛専門医で構成されており、私のような一介の開業医風情の成績は、鼻にもかけず「これまで頭痛とストレートネックはエビデンスなし」として取り合ってもらえませんでした。研究会のような所ですら、問題にされないものを、学会が発表を許すものなのでしょうか?こうした点は、これまでブログで明らかにして参りました。このため、やむなく、この成績はブログで掲載するしかなかったと説明致しました。
先生も申されます。ストレートネックは日常茶飯事に見られる所見であり、従来通り、「頭痛とストレートネック」はエビデンスなしとされます。このような状況にあったため、一般の患者さんにも目にして戴けるブログに掲載せざるを得ませんでした。
この点を、頭痛専門医の方々へ、問い掛けとしたかったのです。学会で取り上げられる可能性があれば行いたいところです。
投稿: 田草川 良彦 | 2012.09.06 午前 08時07分
田草川先生へ:頭痛に関してきちんとディスカッションなさりたいなら是非頭痛学会にご所属ください。今回のようなことがあってもやはり日本国内において頭痛性疾患を語るべきところはここしかありません。きちんと発表され、それが認められれば一般の人たちに語って良いこととなるでしょう。なお、頭痛学会できちんと登録された演題がリジェクトされたという話は聞いたことがありません。なお、本学会の会員は専門医以外の方々も数多いことも付記しておきます。さらに、一般の人たちに(ご自分のかかりつけの患者さんだけでなく、と言う意味です)頭痛のことを語りたいのであればきちんとお勉強になり専門医の資格に挑戦されることをお勧めいたします。
投稿: 管理人 | 2012.09.06 午後 04時50分
こんばんは 真夜中に投稿すみません。
実は、私酷い片頭痛と耳鳴り患者です。 耳鳴りと言うよりも頭鳴りです。 頭の中に飛行機が飛び交う騒音で去年ちょうど今頃の発病以来、眠る事が出来ません。
耳鼻科でも、どこにも異常ないと言われ 藁をも縋る思いで関西より清水医師の診断を受けました。
脳過敏症候群と診断され、デパケン等で治療がされ、三回通った後、地元の頭痛学会の医師を紹介して下さいました。
地元の医師の話では、清水医師の見解は否定されていると、頭痛学会理事長の見解のプリントを渡され、頭鳴りは治らないと宣告されました。
清水医師は、私のお仲間だから大丈夫!と紹介されたのに。。なぜ、地元医師は 初めから相手にしてくれないのか?
頭痛学会理事長見解に右になれ~なのでしょうか?
死にたい位 辛いです。
NHKにも 頭痛学会の対応の遅さにも腹が立ちます。
私のような 患者が何万といる事でしょう。
治せない!ではなく、治す研究をしない。医療現場が混乱初め責任取りたくないから、慌て頭痛学会理事長見解を発表したのでしょう。 あのNHK以外にも何本のテレビに出演していたか。。。清水医師ひとりへの責任転嫁より理事長にも 責任取れと申したい。
ここ数日に 頭痛学会の総会があるんですよね?
また 結果のご報告をお願いします。
願わくば 頭鳴りの研究を数多くの医師が取り組んで下さる事を希望します。
投稿: パリス | 2012.11.15 午前 01時45分
パリスさんへ。ご心配をおかけしました。デパケンでの治療は効果のある人がいます。だからといってまだ厚生労働省がデパケンの適応症として認めたわけではありません。今後、公式に検討されるというロードマップは示されました(記事の「追記」をご覧ください)。
頭痛学会の公式コメントはすでに取り下げられ(この理由は説明されませんでした)ましたのでご覧になったパンフはあくまで過去のものとお考えください。なお、繰り返しのご記載は重複となりますのでアップは致しませんのでどうかあしからずご了承ください。
投稿: 管理人 | 2012.11.17 午前 08時10分
先生、ご回答ありがとうございます。 お返事が、遅れました事 大変申し訳ございません。
あの日から、体調を崩し、脳鳴りの音がより一層、大きくなり、その音だけで体力消耗し、寝たきり顔も洗えない歯磨きも、お風呂も入れない。
こんな、状況が続いています。お風呂は、無理をしてなるべく週に一度は、入るようにしてますが、それもダメな時があります。
パソコンや携帯見るのも目が回るようになりました。 テレビも気持ちわるくなり 視力も落ちて来てます。
私、この先どうなるんでしょう!
脳鳴りの研究をしている医大が、関西にあります。私はそこの研究に期待を寄せていますが、まだ道のりは、遠いようです。
研究が成功し患者に使用出来るまで 私は命もつか。。。
この病気の原因の意地悪な叔母が、幻覚に現れます。
辛い地獄の毎日です。
精神科で、入院した方が楽なんでしょうか? でも、脳鳴りが治らないから、無駄ですかね。
投稿: パリス | 2013.01.30 午後 05時00分
パリスさん、コメントありがとうございます。
関西にお住まいということですので、富永病院(大阪・なんば)の竹島先生か野洲病院(滋賀・野洲)の木築先生、立岡神経内科(京都・丹波口)など、信頼できる頭痛専門医がおられます。いちどこの3人のどなたかに受診されてはいかがでしょうか?
清水先生に始めてもらったデパケンの治療が効果あったならちゃんと継続してくれるはずですし、効果がイマイチということであれば他の方法を考えてくれるはずです。頭痛専門医と言ってもちゃんと勉強している人は数多いとは言えず、「どこでも」と言えないのが泣き所です。この3人の先生方なら自信を持ってお勧めできますので、是非ご受診のうえ、相談に乗ってもらってください。
投稿: 管理人 | 2013.02.02 午前 01時58分
お返事ありがとうございます。
清水医師からの紹介で転院したのが、難波の富永病院の竹島先生なんですよ。
清水医師も竹島先生にお任せしたら、大丈夫と仰ってたので、ショックでした。
先月の末に、予約だったのですが、病院の前まで行くと、「治らないやはり耳鼻科へ」と、言われた事と激しい雷雨の中を泣きながら歩いた記憶が蘇り、怖くて気分悪くなり逃げ戻りました。
どけに、行けば楽になるのかわかりません。
病院に行って「治らない」と言われるのが怖いです。
投稿: パリス | 2013.02.12 午前 01時03分
パリスさん、ご報告ありがとうございます。
デパケンを竹島先生に続けてもらえなかったということなのでしょうか?文脈から考えると「清水先生からデパケンを処方され改善してきたため竹島先生のところへ紹介されたが脳過敏と言うことはありえないのでデパケンを続けてもらえなかった」というように理解されるのですが。竹島先生が前医で効果のなかった投薬を中止することはあり得ないと思うのですが。
もしそうだったとするなら、前回記載したお二人の先生方もおられますし、再度清水先生にお世話になるという方法もあります。あきらめずにトライされることをお勧めいたします。
投稿: 管理人 | 2013.02.14 午前 06時18分
こんばんは、お返事ありがとうございます。
私の説明不足ですみません。
竹島先生は、引き続きデパケンを処方して下さいましたが、私からの「これで、脳鳴りや耳鳴りが治りますか?」の質問に、
「脳過敏症候群なる病気は、医学書には、ない病気で、デパケンでの治療も効果があるのは、20人に1人いるかいないか程度、やはり耳鼻科に行かれるか清水医師の所に戻るか」と仰って、頭痛に関しては私が診るが、脳鳴りに関しては、ここではと、遠回しな言い方で、脳過敏症候群についての理事長からの見解のプリントを渡されました。
今後どうするか、体調と相談しながら決めます。
心療内科にかかろうかとも~
ながながと、親身にご相談にお答え頂き感謝いたします。
ありがとうございました。
投稿: パリス | 2013.02.15 午前 02時54分
追記です
清水医師のクリニックから、富永病院を紹介された時点では、頭痛は改善されて来ましたが、脳鳴りの改善は、ありません。
最初から、三回東京まで通えば、地元の医師を紹介しますとの流れで、三回目に紹介状を書いて下さいました。
投稿: パリス | 2013.02.15 午前 09時04分
パリスさん、辛い症状をよくまとめてお知らせくださいました。
これらを拝見すると、清水先生も竹島先生もご自分なりの最善を尽くされているように思います。
耳嗚(頭鳴)は、いまだにきちんとした病因も解明されていない疾患であり、その中に片頭痛に由来するものがあるということだと僕自身は理解しています。確かにデパケンの容量を徐々に上げてゆくと(僕は600mg/日までに抑えています)耳嗚が気にならない範囲まで小さくなる患者さんは居られますがすべての症例がそうというわけではありません。また、日本で唯一耳嗚の適応病名を持つ「ストミンA」もだいたい40%ぐらいの患者さんに効きます(服用を停めると耳嗚が大きくなるので効果がわかる、という程度)。また、いくつかの漢方薬は耳嗚に効果があると言われていますが僕の患者さんの中には効果があった方は居られません。また、耳鼻科的に精密な耳嗚評価をしてくれる医療機関もあり(関西でどこかはわかりません)、その中にはシーメンス社の「TRT」という治療器具(ご自分の耳嗚と逆位相のノイズをずっと出し続けて耳嗚を意識しなくする)を用いて治療してくれるところもあります(僕の診療所でも導入を検討しましたがハードルが高すぎて断念しました)。すでにいろいろお試しかとは思いますが、諦めないことをお勧めいたします。
投稿: 管理人 | 2013.02.16 午前 12時08分