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2012.10.13

Stroke Prevention Conference

 昨10月12日(金)、飯田橋ホテルグランドパレスにて標記研究会がバイエル薬品の主催で開催されました。特別講演は熊本市民病院の橋本洋一郎先生で「心原性脳塞栓症の治療・予防戦略:経口第Xa因子阻害薬の役割」の演題でした。リバロキサバン(商品名イグザレルト)は第2番目に発売された新規抗凝固薬であり、本来は非弁膜症性心房細動(NVAF)を持っている患者さんが脳塞栓症にならないよう1次予防・2次予防として服用させる薬剤です。しかし、既に橋本先生たちの脳卒中治療チームでは急性期の脳塞栓症においてさえ、rt-PA(アルテプラーゼ)+エダラボン(ラジカット)による初期治療についで経口投与が可能な(嚥下などの問題がない)症例には急性期からの投与を開始しておられることが報告されました。同様の治療が前座の日医大SCUチームの大久保講師から報告されましたが、こちらでは初日には低分子ヘパリンを使用するという方法であり、いずれ橋本先生たちの方法へ移行していくものと思われます。
 新規抗凝固薬はリバロキサバンもダビガトラン(プラザキサ)も半減期が約半日と短く、血中濃度のピーク(最大値)とトラフ(効果が薄くなるはずの値)が生じ、トラフの間の抗凝固作用(脳塞栓発症を防ぐ機能)はどうなっているのかがいつも議論のネタとなります。これについても橋本先生は「薬剤が効いていないはずの時間には他の因子が働いて抗凝固作用を保っているのでは」という仮説を明かされました。確かに、透析中の患者さんには心房細動が多いものの脳塞栓症発症が少なく、それは半減期が短いはずのヘパリンが透析ごとに体に入っているからだ、という現実を知っている我々には受け入れやすい説明でした。
 これまでの新規抗凝固薬の講演会は循環器の先生たちが演者になることが多く、脳卒中専門のドクターの臨床に基づいた講演は少なかったため大変インパクトがありました。

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2012.10.11

第16回総合臨床研究会「片頭痛の最新治療」

1210 江戸川区医師会にて女子医大の清水俊彦先生をお招きし、「片頭痛の最新治療〜その周辺症状とナラトリプタンの至適な使い方を含めて〜」と題するご講演を拝聴しました。医師会の会場の関係からいつも使われる会議室ではなく理事会室のラウンドテーブルの部屋で行われましたが、1時間半ほどの実りあるご講演をいただき参集された先生たちとのディスカッションも非常に有意義でした。
 昨年3月10日(大震災前日)に何故かネット上のブログにおける「頭痛」に関する書き込みが極端に多かったこと(頭痛患者さんたちの第六感?)からお話が始まり、トリプタン服用のタイミングを非常に重視しておられること、さらになるべく頭痛予防薬の使用が短期間で済むように服薬スケジュールを考えてあげていることなどが大変丁寧に語られました。
 会が終わった後の席で、僕が「頭痛患者さんを診る時、自分が患者さんの痛みを正面から受け止めてあげているため、一人終わると自分も頭が重くなる」話をすると「ご自分まで痛く感じてはいけない、間髪を入れずに対策を説明し、悩んでしまってはいけない」と返されてしまいました。裏返すとそれだけ客観的な評価をしながら患者さんを評価しているのだな、と理解しました。そうでなければ1日200人を超す頭痛患者さんに的確な診断・治療を施すことができないこともよく解りました。

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2012.10.10

片頭痛の予防薬に対する保険適応がふえました。

 片頭痛の予防薬として厚生労働省から「適応」と認められていた薬剤は、これまで塩酸ロメリジン(商品名:ミグシス、テラナス)とバルプロ酸(商品名:デパケン、セレニカ)のみでした。しかし、実際にはこの2剤だけではなくいくつものお薬を「片頭痛が起こりにくくなるように」投薬を行っておりました。片頭痛の患者さんにはこれらの事情はよくお話しして処方箋をお渡ししていたわけですが、薬剤師さんから渡される薬剤の説明書に「片頭痛の予防」とは一切書かれていないことからご不安を感じる患者さんもおられたことは事実です。頭痛学会ではこうした薬剤が「公に認められる」片頭痛予防薬となるよう、厚生労働省に何度も申請を行ってきたわけですが、9月以来、以下の3薬剤が片頭痛予防薬として認められることになりました。
1)プロプラノロール塩酸塩(商品名:インデラル)
2)アミトリプチリン塩酸塩(商品名:トリプタノールなど、後発品を含む)
 このほか、上記のアミトリプチリン塩酸塩とチザニジン(商品名:テルネリン)が緊張型頭痛治療薬としても認められました(適応外使用における保険診療上の取り扱い拡大)。こうして少しずつですが頭痛診療が行い易くなってゆきます。詳細は上記リンク(頭痛学会HP)をご覧ください。

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