講演会「東京認知症時間」
「東京認知症時間」って、いったい何?...MRさんからお誘いを受け、山ほどのはてなマークを浮かべつつ、演題タイトルに惹かれて西神田の会場まで出向きました。企画されたのは順天堂江東高齢者医療センターメンタルクリニック病棟医長笠貫先生(以前このブログでご紹介したことがあります)で、主催は抗認知症薬「レミニール」発売元のヤンセンファーマ。
最初の講演は神戸先生(こだまクリニック)で、「認知症と医療と、人との関わり」。よく語られる「Living well with demenncia」というワードがいかに絵に描いた餅であるか、現実の認知症医療は例えばゴミ屋敷の住人を診察し、いったん認知症と診断してしまうとその人がいつの間にか遠い施設に入れられてしまい、街から忽然とその人が消えてしまうことに繋がる、といったことを訥々と語られました。ものを片付けられず家の中が荷物だらけになり、そのうち整容にも問題が出てくる....というのはよく目にする現実。どうわれわれが対処してゆくべきなのかを深く考えさせられました。
第2の演題はビッグネームの繁田先生(東京慈恵会医科大学)。まず「認知症の人は健康保険で治療を受ける権利がある」とキツいパンチ。昨今フランスで抗認知症薬が健康保険の適応外となったことを意識されてのご発言でしょう。抗認知症薬はきちんと診断をつけ、適切に投与すればある一定期間とは言え、患者さんのことを助けることができます。認知症に対し医療は、①身体的な改善、②心理的な改善、③社会的な改善、④霊的(Spiritual)改善をめざさなければならない、と述べられました。さらに、本人の傷付きを最小限にし、本人が安心でき家族が希望を持てる医療を提供しなければならない、と訴えられました。サービス利用を受け入れようとしない患者さんたちは「哀れになった自分に若いお姉ちゃんお兄ちゃんたちが施しをしている」と言うイメージを抱いていることが多く、それをいったんハードルを越させてあげると「誰も私をバカにしなかった」とわかってもらう、こうした助けを受け入れた時にちゃんと褒めてあげることが大切である、などを教えていただきました。
昨今、メーカーによる講演会は要らぬコンプライアンスから「公正な表現」ばかりを強要されることが多く、行っても時間の無駄となることがふえてきましたが、このような講演を許してくれたヤンセンファーマに感謝するとともに企画してくださった笠貫先生に深く感謝いたします。本当に充実した「認知症時間」をありがとうございました。
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