2014.11.02

第15回日本ロービジョン学会学術総会

10389135_719532998136953_6822927035 当院のご近所、京成小岩駅北側で眼科を開業しておられる田中寧先生のお誘いを受け、大宮ソニックシティで開催されている日本ロービジョン学会にお邪魔いたしました。ご本人によると「予想を上回る参加数」とのことで、会場は賑わっておりました。何よりの驚きは、ポスターの前での熱いディスカッション。医者ばかりでなくパラメディカルの方々や患者さんも参加していたようです。

10351762_719539194803000_8852526076 展示では弱視対策のアイテムが。専用の機器で画面の白黒を逆転するだけでも見やすくなるそうです。同様の展示が6軒ほど並んでいました。中にはスキャナを使って読み込み、自動読み上げするものもあり、この手の市場が発展中であることを感じました。ロービジョンはいわゆる「弱視」なのですが、お子さんの時からそうなっていると周辺が単なる「知恵遅れ」と認識してしまい、指導がうまくいかないことがあるそうです。また、黄斑変性症などで高齢になってから症状発現して来る場合もあり、こうした時にはさらにツールへの依存が必要です。これらはきちんとロービジョンであると認定されれば補助が出て通常価格の10%負担で購入可能とか。

10712943_719538931469693_8550585664 5時半からパネルディスカッション「医療と教育の連携を問う - コミュニケーションギャップの克服に向けて-」。慶應義塾大学 日吉心理学教室の中野先生を座長に、獨協医科大学越谷病院 眼科視能訓練士の杉谷さん、医療法人橘桜会 さくら眼科の松久先生、文部科学省初等中等教育局特別支援教育課の吉田さんが順に登壇。

10713009_719546674802252_7080874939 2番目演者の松久先生。学校教育における「弱視のため困っている」子供への理解ができない教員への対策が必要、と。ベテランと言われる人ほど眼科からの提案を受け入れてくれない。ICTによる視能補助も受け入れず、学習・知能障害と一緒に扱ってしまう。結果として「困っている」子供をもっと困らせてしまう、とのこと。

10614256_719550714801848_4771366541 吉田さんによる行政・教育・学校側からの報告を聞いてから、壇上に3人が揃ってディスカッション。診断書が出ている児童にもきちんとした対策がうたれていないケースもある、と杉谷さん。吉田さんからは「場合によっては学校長あての公文書を作成してもらう方がよい場合がある」との返答。さすが教育はお役所仕事。在来の盲学校ではやろうとしてもロービジョン対策が十分に出来るとは限らない。座長の中野先生も「病院や医師は選べるが学校や教師は選べない」と強調しておられました。

1380507_719556511467935_86925977648 帰り際に田中先生を捕まえてツーショット。この学会は先生が所属していた獨協医科大学越谷病院が主幹でした。お疲れさまでした。いい勉強になりました。

(FaceBookで記載したものを転載いたしました:2014.11.01

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2014.08.15

第4回認知症予防学会のお知らせ

Photo 院長の出身医局の先輩、北村伸先生(日本医科大学特任教授)が会長を務める学会が地元、江戸川区タワーホール船堀で開催されました。第2日目(27日)に院長もお役目をいただき、お手伝いしてまいりました。また、東京都医師会野中博会長が第3日目(28日)の市民公開講座で座長を務められました。市民公開講座に沢山のご参加ありがとうございました。
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2013.03.24

第38回脳卒中学会(STROKE2013)

1303 3月20日より23日まで日本医科大学付属病院神経内科片山泰朗教授を会長に日本脳卒中学会総会がグランドプリンスホテル新高輪で開催されました。久しぶりの東京での開催ということもあり(一昨年3月25日のSTROKE2011は東日本大震災の影響で夏に順延され京都での開催となりました)1731演題、5,300名ほどの参加者を迎え盛況のうちに閉会いたしました。内容のレポートは三品先生のブログ(初日会長招宴2日目遠隔診療ロボット会員懇親会3日目)に詳しく、そちらをご参照下さい。
 こちらでは、片山教授の会長講演についてご報告いたします。「私たちの脳卒中治療研究-基礎と臨床のcrosstalk-」と題された講演は、これまで教室の実験グループでなされてきた基礎研究が実際の脳卒中急性期の臨床にどれほど関わっていたかを示したものです。脳浮腫に関するグリセロール、脳保護に関するエダラボン、FK-506の効果、EPA前投与による脳梗塞軽減・保護効果、骨髄間葉系幹細胞による治療効果などが紹介されました。経時的にすべての業績を見てきた自分たちにとって特に珍しいこともありませんが、こうして改めて会長講演として拝聴すると(特に自分が関わったパートなどは当時のことが)フラッシュバックして感慨ひとしおでした。すべての薬剤が実用化に至っているわけではありませんが、こうした基礎研究の一つ一つが現在の脳梗塞治療の礎となっていることを痛感しました。
 振り返ると、平成7年に先代赫彰郎教授の下で第20回脳卒中学会を主催した際(当時医局長でした)、会長講演で「新しい事を話したい」というご意志で「大脳白質病変」について別グループでまとめているのを横目にしながら「なぜこれまでの教室の業績を並べるだけではいけないのか」と当時助教授だった片山先生と語ったのを思い出します。教室を退き北総病院の外来を週1回お手伝いするだけだったにも関わらず、最後のスライドで共同研究者の中に入れていただいたことも大変有り難いことと感じました。

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2012.11.23

第40回日本頭痛学会総会

1211 11月8〜10日の3日間、東京ドームホテルにおいて日本医科大学脳神経外科喜多村教授を会長に表記学会が開催されました。今回のテーマは「頭痛診療の温故創新」でした。今回は開催前日に当たる8日夜に会長招宴が評議員までを対象に開催されました。
 今回は10日のポスターセッションでの座長に指名され、8題を担当いたしました。三叉神経痛に関する演題2題、後頭神経痛1題、一次性労作性頭痛1題、後頭神経痛1題、小児緊張型頭痛の体操による予防1題、歯科関連の頭痛1題、CDS(環椎軸椎性関節炎)1題でした。このうち、小児の頭痛体操は秋葉原駅クリニック大和田先生の演題でした。片頭痛・緊張型頭痛共通に効果あるとされているのがNHKテレビやムックなどで坂井頭痛学会理事長が公開している「坂井式体操」なのですが、小児の頭痛患者にはなかなか実施してもらうことができません。これを克服するために大和田先生は音楽まで用意したずつ体操を提唱したわけです。対象を緊張型頭痛に限定したため首を振る動作も含まれます。本来なら動画も提示して口演でお見せいただいたほうがよかった題材だと思いました。また、宮城県登米中田の歯科医師佐藤先生による演題は歯科治療に訪れた患者さんの中に歯科治療により頭痛が軽快したご報告でした、ウチでは頭痛診療の初回には必ず顎関節の具合と口腔内視診で歯科治療の必要性チェックを行い、必要あれば当院向かいのみやび歯科での治療を勧めていますが普通ではそれほど検討されていないのが実情です。先生のご発表では簡単な調整で肩こり・頭痛が軽快した症例もあり、頭痛専門医と歯科の連携の必要性を通関しました。写真はその佐藤先生との記念写真(先生の奥様がシャッターを切ってくださいました)です。

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2012.08.16

「脳過敏症候群」に関する頭痛学会コメントについて

 女子医大頭痛外来の清水俊彦先生が提唱している「脳過敏症候群」についての頭痛学会理事長坂井文彦先生のコメントが頭痛学会ホームページで8月14日付けで公開されました。
 「脳過敏症候群」に関しては、清水先生が国内・国際学会で積極的な研究発表を行い、実際抗てんかん薬であったバルプロ酸(商品名デパケン、セレニカ)やトピラマート(商品名トピナ)の片頭痛に対する治療効果から「ありうる説だ」という理解が広まりつつありました。昨年はバルプロ酸の片頭痛に対する厚生労働省の適応認可がおり、表立って片頭痛の患者さんへの投薬が出来るようになっておりましたが、そうした折、NHK「ためしてガッテン」で片頭痛を卒業したはずの人たちに起こる耳嗚・めまいへの治療効果に就きセンセーショナルな紹介がなされました。自分もちゃんとビデオに撮ってあるのですがデパケンのパッケージが画面に映り、一気に世間への認知度が広まりました。実は、それ以前もデパケンRを片頭痛の患者さんへ「頭痛発作を予防する薬」として処方していたのですが、心ない調剤薬局によっては「あなた、てんかん持ちだったの?」などという薬の渡し方をされたこともあり、患者さんが服用することを躊躇する場面も多く、治療効果も上がっておりませんでした。この番組以降、患者さんの服用率が上がり、かつ治療成績も向上するという、患者さんにとっても投薬する自分にとってもハッピーという状況になりました。
 ただし、こうした事態はあまり(頭痛専門医にとっても)歓迎されたものではない面もあったようで、坂井先生の「学会ホームページ上のコメント」がなされたものと受け止めました。こうした「予防薬治療」はもとより成功率はさほど高くなく、自分も頭痛学会で「予防薬の決め手がない(=数多くの選択肢から選ばざるを得ない)」ことを発表し、何人もの先生のご賛同を得ています。その中でより正解率の高いバルプロ酸の効果を背景にした「脳過敏症候群」説が闇に葬られるような事がないように祈るばかりです。
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付記(2012.09.05)
 後日譚があります。このページをご覧になった方はどうぞ一緒にご閲覧ください。

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2012.06.25

第27回老年精神医学会

1206 6月22日、目々澤醫院の診療をお休みして大宮で開かれている日本老年精神医学会に参加してきました。時間的余裕がなく、山折哲雄先生(宗教家)の特別講演「日本人の死生観:大震災の惨禍を越えるもの」と斎藤正彦先生の生涯教育講座「成年後見人制度は高齢者の人権を守るか?」の聴講のみとなりました。
 山折先生の講演(写真)はスライド1枚もない講演で、被災の現地で大伴家持の古歌「海ゆかば水漬く屍、山行かば草生す屍」の句が思い起こされたと始められました。寺田寅彦は『日本人の自然観』で、日本は予測不可能な地震を多く有する国土で経験的科学に基づいた「無情」という宗教的真実が国民意識の奥底に根付いている、逆に和辻哲郎は『風土』で予測が可能である台風に代表されるモンスーン風土が日本人の性格を規定づけており、そこから世界に類を見ない倫理観・道徳観が築き上げられた、と話されました。最後に、宮澤賢治が『科学は冷たい、学問は暗い、芸術は情熱を失っている』と書いていたことを紹介し、実際に東北大震災に遭われた地区でメンタルケアを担当しているドクターからの質問に対し、「今は深い悲しみを共有してあげる、寄り添う」ことしか残された人たちを救う方法はないのではないか、と答えておられました。
 斎藤先生のご講演では成年後見者制度の実施以来、本来の「資産管理能力を失った」患者さんの資産保護」という目的以外の「相続争いの手段としての利用」や「詐欺行為としての利用」まで発生している事実が知らされました。驚くべきことにこの制度が始まって以来、本来の後見人たるべき実子・孫・親族以外の「第三者後見(市民後見まである!)」が40%以上もあるということを紹介されました。我々認知症の患者さんを診ている医師としてはこの制度のための診断書を書かねばならない立場にあり、家庭裁判所からの依頼を受けるわけですが純粋に医学的事実を書き込むことになるのですが、ご本人が主張することとご家族が主張することに大きな隔たりがある場合にこれまで以上に細心の注意を払わねばならないことを痛感しました。認知症の重症患者さんでよく見られる「病院やホームに(本人の意志にかかわらず)入院・入所させねばならない場合にはこの制度よりも行政措置の「身上監護義務」をまず適用すべきだ、とも説明されました。この件はもっとよく勉強しなければなりません。

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2011.11.25

第39回日本頭痛学会総会

1111jsh 大宮ソニックシティにて埼玉医科大学神経内科荒木信夫教授を会長に標記学会が開催されました。今回は評議員会が早朝7時30分から、ということで5時半に早起きして京成線-京浜東北線を乗り継いで大宮まで出かけて参りました。
 今回のテーマは「頭痛と自律神経」ということで、同じタイトルの会長講演、シンポジウムがありました。荒木先生のお若い頃からのご研究を順を追ってご紹介され、さらに最新のデータもあり、片頭痛に自律神経がどれだけ深く関わっているかが理解できました。シンポジウムで興味が引かれたのは田村直俊先生の「交感神経血管説:戦前のドイツ語圏における片頭痛研究」でした。現在の片頭痛に関する理解はセロトニン・SD・三叉神経血管説などからオレキシンなど進歩著しいものがありますが、当時の学説も現在の視点から見てみるとちゃんと理論がよくわかる、というご発表でした。かつての論文の中に現在に通じる解釈を見いだすのはロマンチックでもあります。ニトログリセリンの片頭痛予防効果(発作間歇期に服用)などはいろいろな治療に効果がない患者さんに試す価値がありそうな気がします(注:片頭痛発作の時にニトログリセリンを使用すると症状悪化します)。昨年僕が座長をした際の「片頭痛に鍼」もシンポジウムに含まれ、埼玉医大では広い視点で片頭痛に立ち向かっておられるのがわかりました。

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2011.11.04

第23回日本脳循環代謝学会総会

1111cbfmj 都市センターホテル(半蔵門)にて標記学会が慶応大学神経内科鈴木則宏教授を会長に11月4日より開催されます。それに先立ち、3日夕刻より評議員会が開催されました。そののちプレイブニングセミナーとして慶応伊藤大介専任講師によりiPS細胞を用いた神経疾患への応用についてのご講演を拝聴しました。三品先生のまとめはこちら。こうした培養細胞における研究は脳卒中の再生医療ばかりに目が奪われがちですが、生検することが困難な脳神経変性疾患に対し、皮膚生検から得られた細胞をもとにiPS細胞を作成し診断や創薬に用いていこうというものでした。
 評議員懇親会では、4日の招待講演をされるルンド大学(スウェーデン)Stem Cell CenterのZaal Kokaia教授が、小生の恩師に当たる(同じルンド大学の)Bo Siesjo教授のことを話題に出してくださいました。写真は、その席上で会長の鈴木先生・Zaal教授とご一緒に記念撮影させていただいたものです。鈴木先生もルンドでPhDを取得しておられ、「ルンドつながり」の写真でもあります。

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2011.09.18

第28回日本医学会総会2011東京 特別企画プログラム

 4月に開催予定だった医学会総会が3.11の大震災で縮小・延期され、限られた演題だけを並べてお台場の東京ビッグサイトで講演会となりました。災害医療支援に関わる発表は三品先生のブログでご覧下さい。
 個人情報のしばりで融通の利かないはずのレセプトデータがお役に立った、という発表が福岡大学の谷原先生から「被災地医療支援及び再建における診療報酬明細書(レセプト)情報の有効性」と題して発表されました。東日本大震災の後、被災前の診療情報消失が問題となりました。こうした情報を震災後現存する診療情報から復元することについての報告です。以下箇条書きで並べます。

<発生した状況>
1)診療所のカルテ・レセコンを含む一切の診療情報の喪失
2)患者さん本人の健康保険証紛失と自分の投薬にかかわる記憶のあいまいさ
3)保険請求されたレセプトは審査支払基金に残っている

.....つまり、大けがはしないで済んだものの、着の身着のまま逃げて避難所に入ったため普段服用している高血圧や脳梗塞再発予防の薬がなく、かかっていた診療所や病院も被災してしまったためどんな薬を飲んでいたかがわからない状況になった患者さんたちが大量に発生した、という事実です。ここでレセプトデータが迅速に開示され、それを避難所の緊急診療所で参照できれば良かったのですがそうは簡単に行かなかった、というわけです。本来は個人登録番号でも用意されていて、そこから検索すれば病歴や投薬歴がわかる、というのが筋道であるべきなのですが。

<時間的経緯>
3/19 岩手県医師会から国保連合会に対してレセプトデータ提供依頼あり
3/25 第三者に対するレセプト情報開示の許可が下りた
4/11 死亡者身元確認のため歯科レセプト情報開示がなされた
<各県別の照会状況>
福島県 2863件のレセプト照会
    主として頭書き情報、薬歴については96件(3%)にとどまった
宮城県 資格関係の照会がほとんど(県内<県外)
岩手県 投薬内容の照会が多かった
    被災した医療機関を再開・復興させるためにデータ提供依頼あり
    頭書き情報・傷病名・投薬内容などを開示(データもしくは紙媒体)
<照会の妥当性の検証>
 ほとんどが医療機関からの電話による依頼であったが、支払基金よりコールバックして身元を確認し、情報そのものは電話で伝えることはせずファクスで送信することにより伝達した。
 
 これまで請求-支払のための審査の対象でしかなかったレセプトデータが未曾有の災害に対しわずかでも役に立ったのは素晴らしいことだと思います。こうしたデータは本来患者さんのためのものです。ですから、こうした大災害の時だけでなくきちんとセキュリティをかけた状況で日常診療のために用いられる日が来るべきだと思います。こうした経過はあまり一般ニュースにも流れません。是非、われわれ医療者だけでとどめず世間に広められるべきではないでしょうか。

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2011.06.26

IHC2011(国際頭痛学会:ベルリン)その1

1006ihcfutari H.C. Diener教授が会長を務められるIHC2011がベルリン・Maritimホテルで開催されました。すでに研究から遠ざかっている自分としては、やはり実際の治療論が興味の中心となります。日本国内からは慶応・北里・獨協など、主としてポスター展示が出ていました。目新しいものは(1)針のないトリプタン剤自己皮下注射器、(2)群発頭痛用に特化された高濃度酸素吸入ボンベ、(3)片頭痛治療薬の評価に「2時間目の時点における効果判定」を選ぶか「全般改善度」を採るかというディベート、(4)片頭痛に対するボトックス治療方法論の確立、などが挙げられます。
 今日は帰国したばかりのため、明後日以降ゆっくりご報告いたします。

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